金縛り

先日、久しぶりに金縛りに遭った。今でこそ金縛りはオカルト寄りの現象ではなく、睡眠麻痺という理屈のはっきりしている現象だけれど、自分的には、そうは言ってもオカルト寄りとしか思えないパターンも少なくない印象。

ただまあ今回は、確かに別にオカルトチックではなかった。単に(ああ頭と肉体が乖離しとるな)と感じる現象で、正確な時間はわからないけれど、すぐに解けた。

自分の場合、というかたぶんたいていの人がそうだろうと思うけれど、金縛りになる時って、寝入り端というか、寝ようとしてウトウトしているときが多いんじゃないか、と思う。ぐっすり熟睡していて、ふっと目覚めて金縛り状態になった、なんてことは、少なくとも自分は一度もない。

それに、金縛りになる時って、だいたい前兆がある。このへんについては、他の人はどうかわからないけれど、自分は(あ、来るわ)と百パーではないもののかなりの確率で前もってわかる。というのも、金縛りになる時って、前述したようにたいていウトウトしている時なのだけれど、前兆として耳元で風の音がし始める。それもそよ風っぽいような生半可な音ではなく、けっこう暴風というか、轟々という感じで響きだす。だから(ああ来るな)とわかる。そしてそのまま何も起こらないこともあるけれど、自衛手段として、風の音がしだしたら無理矢理にでも起きる、ということもする。すると金縛りには遭わない。逆にいうと、金縛りになるときは、おそらく八割がた前兆として風が耳元で唸る。

因みに最も金縛りによく遭っていたのは中学生の頃。特にその中でも、二回ほど明瞭に覚えている体験があるのだけれど、一度は、家で平日の真昼間に寝ていて、金縛りになった。そのときは、足を骨折していて、膝から下にでかいギプスを付けていたので、二階の自室に上がるのが大変で、一階の和室に布団を敷いて寝ていた。しかも確か骨を折ってすぐの頃で、まだ痛みがあって、学校を休んで昼間から寝ていた。そうしたら、突然、何かが上に乗っかってきたというか、手首を押さえつける感じで何者かが寝ている自分の体に覆い被さってきた。で、(な、なんや?)とびっくりしながら目を開き、起きようとしたものの体がまったく動かず、余計に混乱しまくった。部屋は真っ白で(昼間の和室なのですべての窓やガラス戸に障子が閉まっていて、それを透かして陽が射していたため視界が白っぽかった)、しかも自分の上には全然知らない痩せた白髪の婆さんがこちらの手首あたりを押さえながら被さっていて(自分の体が動かないのですごい力に感じた)、「なんでこんな時間に寝とるんや?」みたいに訊いてきた(正確な言い回しはさすがに覚えていないし、それが声として聞こえたのか、意識に直接テレパシーみたいに無音で届いたのかは定かではない)。ただそんなことを問われても、その時点で動かせるのは眼球だけで、もちろん声も出せなかったので、心の中で(足の骨を折って痛いし動けないから寝とる)みたいなことを喋っているつもりで答えた。すると婆さんはあっさりと「そうか」と納得したように言って(これも声だったのかどうかは不明)、すうっといなくなった。それと同時に金縛りも解けた。はっきりとは言い切れないけれど、たぶんそれが金縛りの初体験。だから本当に何が何だかわからず、金縛りというものについても全然知識がなかったので、解けてからも呆然となっていた。そもそも未だにその婆さんが誰なのかわからない。

二回目は、やはり中学生の頃のことで、自室で真夜中に、さて寝るか、とベッドに入ってちょっとした頃に、なった。その時は、灯りを消した真っ暗な部屋で寝ようとしていたのだけれど、ふと気づくと、閉めたはずの入り口のドアが音もなく何度も開いたり閉まったりしていて、何者かが部屋に出入りしている気配があった。その時点で体は金縛り状態で、目しか動かなかった。そんな状態なのに、なぜ暗い部屋にいてドアの開閉がわかったかというと、開いたり閉まったりする度に廊下の明かりが見えたり消えたりしていたから。要するに、部屋にぼんやりと光が射したり絶えたりしていて、その光が漏れた時に影みたいなものが出入りしているのが見えた。しかし前回の婆さんみたいに、その影は接触してこなかった。なんとなくその影は一人ではなく、複数のような気がしたのだけれど、その理由は、なんとなくドアの向こう、つまり廊下の方で何やら相談みたいなことをしている感じがあったから。ただ、その内容はまったくわからなかった。というのも、かすかに聞こえてくる声のようなものはすごく小さかったし、そもそも言語かどうかすらわからないものによる会話で完全に意味不明だったから。で、影が部屋に入ってくる時は必ずひとりで、なんか室内を窺っている気配があり、出て行ったかと思うとまた別のっぽいのが入ってきて、交互に部屋を出入りしているようで、同時に入ってくることはなかったし、触ってきたり話しかけてきたりということは一切なかった。おそらくベッドサイドまで近づいてくることさえなかった。そして、しばらくすると影の出入りやその気配が消えて、気がつくと自分の体の自由も戻っていた。

まあこんな感じで、今でもしっかりと覚えている体験はこれくらいだけれど、金縛りに遭った回数でいえば、余裕で何十回と経験している。その経験の中では、確かに今回みたいに単なる睡眠麻痺で簡単に納得できることも少なくはないけれど、中学生の頃のはっきりと覚えている二回は、どう考えてもオカルト寄りだったと思う。百歩譲って二回目の方は夢を見ていた可能性がないとも言い切れないけれど、一回目の婆さんの方はあまりにリアルでイミフ過ぎる。でも一応自分の中では、頭がおかしいと思われかねないのであまり他人には言わないけれど、一回目は何か霊みたいなもの、二回目はエイリアンか何かのアブダクション未遂的なもの、だったのではないか、と思っている。

そういえば、はっきりと覚えている初期の二回に関しては、風の音の記憶がない。考えてみると、風の音の後に金縛りになるようになったのは、それなりに場数をこなしてから、つまり大人になってからのような気がする。初めのうちは風の音なんか聞こえてなかったかもしれない。

ところで、ぜんぜん話は変わり。

先週接種したワクチンの副反応だけれど、結局前回書いた以上のことは何もなく、日曜にはもう倦怠感もなくなり、接種箇所の軽い筋肉痛っぽい痛みも消えて、そのまま通常通りの体調に戻った。今のところモデルナアーム的な症状もない。痒いどころか、もうどこに打ったのかすら見てもわからない。因みにほぼ同時期に2回目のファイザーを打った同い年の女友達がいるのだけれど、38度超えの高熱が出て腕も強烈に痛み、死にそうこいたらしい。