安奈〜HERO

正直なところ、世代的にはちょっとズレているのだけれど、年長の人たちとカラオケをやる時は、甲斐バンドの「安奈」と「HERO」をよく歌う。この二曲はもともと好きだし、声域がそこそこ合うので、無理なくけっこう気分良く歌うことができるし、オッサンたちとか皆さん誰でも知っているレベルの歌なのでウケも悪くない。ただ「安奈」は微妙に節回しの難しい部分があって、久しぶりの時は前もって家で、Spotifyで聴いて歌詞を見ながらちょっと練習する。さすがに大きい声では歌えないので、口ずさむ感じだけれども。逆に「HERO」はいつでも問題なくイケる。声を張り上げて歌うと自分に酔える。

この世代だと、松山千春も好きで、だいぶ知っているけれど、歌うとなるとボーカルレンジが合わず、甲斐バンドのようにはぜんぜん歌えない。一段と高音域が高くて、「旅立ち」とか「恋」とか「長い夜」とか、さらりと歌っている本人の歌唱を聴いていると(歌えそう)と勘違いしてしまうけれど、実際には無理。そうとう調子のいい時に喉が開いてくれば、たまに「大空と大地の中で」がギリでいける時がある。でも、たいていは無理。まああれが歌えるくらい調子の良い時なら「勝手にシンドバッド」や「イチブトゼンブ」がイケる。尤もどんなに調子が良くても「ギリギリchop」なんかは絶叫して誤魔化すだけだし、そもそもB'zは声の高さ云々以前に早口言葉のような歌詞に口がついていけないものが多い。「F・E・A・R」なんて高音マシンガンすぎて舌足らずには拷問レベルだし、「ギリギリ」でも「シマリがないとまたみんなにコソコソ笑われるぞオマエ」なんて、いつも後半で日本語が崩壊する。

ただ、カラオケはキーが変えられるので原曲のキーにこだわらなければ誰でもそれなりに歌えてしまうし、一発目と何曲か歌ってからでは、歌いやすさも変わる。だいたい、歌わない期間が長いと、久しぶりにカラオケに行った時なんか、喉が固くなってるのか、最初のうち、自分でもびっくりするくらいヘタクソで歌えない。ふだんうちで声を張り上げて歌うことなんてないし、車の中でも口ずさむくらいはしても「歌う」まではしないから、間が開くと、歌った時に(え?ぜんぜん声が出ねえ)となる。でも、たとえば喉がこなれてくると「裸足の女神」なんかも歌えてしまう。サビの「OH My〜」は乗れていればそのまま行けるけれど、調子の良し悪しはその後の「DON'T YOU CRY MY 〜」のパートで変わり、調子のいい時はそこをスムーズに繋いで畳みかかけるように広げて歌える。ダメな時はそこで墜落する。ただ、いずれにせよ立って歌わないとキツい。関係ないけれど、「裸足の女神」の「DON'T YOU CRY MY 裸足の女神よ」の部分と「勝手にシンドバッド」の「心なしか 今夜 波の音がしたわ」の部分って、いつもそっくりに感じる。しかし「勝手にシンドバッド」ってほんとうにすごい曲だと思う。「今何時 そうねだいたいね」とか「胸騒ぎの腰つき」とかのところだけでも、ぶっちゃけ日本人で知らない人おるんかいな、という感じ。

まあそれはともかく。

松山千春の高音域は国内シンガーでも最高ランクだろうし、というか、やはりこのへんの松山千春さだまさし谷村新司(亡くなってしまったけれど)クラスは、他の歌手とは歌の上手さのレベルが段違い。よくオッサンたちがカラオケで「昴」を歌っていたりするけれど、谷村新司本人の歌唱を聴くと当たり前だけれどもモノの違いを感じさせられる。というか谷村新司ってたぶんボーカルレンジがめっちゃくちゃ広い。だから、他人の歌のカバーなんて、男物でも女物でもどんなものでも余裕でこなしてしまう。ただまあ歌の上手さって数値化して順位付けできるものではないから難しい。この三人以外にも村下孝蔵とか来生たかおとかフミヤとか松崎しげるとかサブちゃんとか挙げだしたらキリがないし、順位なんてつけられない。そもそも歌唄いとして世に出ている人たちは基本的に上手い。

それにしても自分的には、この「ちょっと上の世代」の歌って、かなり好きだったりする。元はといえばアルフィー(とくに坂崎幸之助)の影響だと思うけれど。「『いちご白書』をもう一度」とか大好物で、普段からよく聴くし、よく歌う。フォークは世代的に完全にズレているけれど、昔の長渕も好きだし、「22才の別れ」とか好きだし、GSなんかちょっとどころではなく上だけれど好きで「色つきの女でいてくれよ」とか「想い出の渚」とか良いし、こういうことを人に言いながら気分良く「時代おくれ」なんか歌うと、しばしばオッサンたちに「おまへ、ほんとうは幾つや?w」と呆れられるけれど、好きなのだから仕方ない。だいたい浜省もリアルタイムとは言い難い。でも好き。自分で歌うとしても、尾崎と同じ感じでボーカルレンジ的に無理しなくていいし。素人感覚だけれど、浜省と尾崎ってレンジ的にはほぼ同じに感じる。

とか散々言いつつ「で、オハコは何なんや?」と問われたら、やっぱチェの「ジュリア」なのだけれど。

ちなみに世代感でくくると、アイドルだとキャンディーズはズレる。ピンクレディの方がまだ馴染みがある。でもガッツリ好きになったアイドルは中森明菜が初めてで、松田聖子は違う。そもそも松田聖子は、もちろん「青い珊瑚礁」とか「風立ちぬ」とか「赤いスイートピー」とかヒット曲は知っているし、「ああ私の恋は〜南の風に乗って走るわ」とか「風立ちぬ〜今は秋」とか「春色の汽車に乗って 海に連れて行ってよ〜」とか口ずさめるけれど、全く思い入れがない。ただなぜか「赤いスイートピー」は歌詞を見なくても1番は全部歌えてしまう。その点、中森明菜は、ちょっと前にNHKでやっていて、YouTubeにもあるけれど、全盛期のコンサートの曲は全部どストライク。「ミ・アモーレ」は日本芸能界の至宝。なんか前にも同じようなことを書いた気がするけれど。

というか、つらつらと適当に書いているうちに「安奈」も「HERO」も関係なくなってしまった。
(敬称略)