一度は

死ぬまでに運転してみたいクルマが三種ある。しかしおそらくその願いは叶えられないまま終わる。

運転してみたいクルマとは、パトカー、大型バス、アメリカ合衆国大統領専用車『ビースト』。

天皇陛下のセンチュリーは、後ろに天皇陛下が乗っていると思ったら緊張しまくりそうだから、遠慮しておく。その点、アメリカの大統領は日本人の自分には関係ないので、別にバイデンとか乗ってても緊張はしそうにない。トランプだったら、分からんけれども。

いずれにせよ、どれも、全く現実的ではない。唯一ギリで頑張ればもしかしたらなんとかなるかもしれないのが大型バスだけれども、今更新しい免許が取れるとは思えないのでやはり無理。パトカーは、警察官にならない限り無理だし、大統領専用車なんて絶対に無理どころか、手でボディに触れることさえできないというか、実物を目にする機会すらなさそう。たとえば今度のサミットにも持ってくるだろうけれど、わざわざ広島まで行って沿道で見る気はない。ただ、もしも自分がふらりと行ける範囲で大きな国際会議みたいなものがあって、アメリカの大統領がビーストで通るなら、たぶん見に行く。

そもそも所謂VIPの人って、ほとんど会ったことがない。子供の頃、JRの在来線の特急のグリーン車で、たまたまじいちゃんばあちゃんと旅行しているときに、もう亡くなったけれど三笠宮家のヒゲの殿下には会ったことがある。会ったというか、正確には「見かけた」だけれど。しかし皇族でも別にグリーン一車両貸切ではなく、ガラガラだったけれど、一般庶民のうちらでも離れた場所に座れていたくらいだから、車両後部の一角を何席か占有している程度だったし、普通に通路も通れてトイレに行くふりして「こんにちはー」とか挨拶をしたら「こんにちは」と返してもらった記憶が朧げにある。もちろんクソガキの自分が皇族の人など知るはずがないので、じいちゃんかばあちゃんに「皇族の人が乗ってる」と教えられて、用もないのにその横を通って見にいった。うっすらと記憶に残っているのは、仰々しく何人もSPみたいな屈強な人にがっちりと守られていたわけでもなく(周囲の席にはさりげなくいたかもしれないけれど)、ご本人は対面にしたシートの窓際で、三人くらいで穏やかに談笑しながら坐っておられた気がする。ただ、おそらく警備上の判断だろうけれど、座席は、車両の真ん中とかではなく一番後ろの席だったような気がする。というのも「偉い人なのに隅っこに座るんだな」と幼心に思った記憶があるから。

自分が接近遭遇したことのある人で最高ランクは、このひげの殿下。というより、他は本当に見たことすらない。天皇陛下や皇后さま、上皇さまや上皇后さまも、肉眼で見たことはない。代々の総理大臣も見たことない。市長なら何回も間近で見たし、握手をしたこともあるけれど。また、県会議員なら親しい先輩にひとりいる(あんないい加減な先輩がよく議員なんかやっとるな、とみんな思っているけれど)。

そんなことはともかく。
機会があれば、パトカーと大型バスとビーストは、運転してみたい。しかしさすがに公道は怖いので、鈴鹿サーキットみたいなクローズドなコースとか、信号や交差点もなく、周りに車もチャリも歩行者もいない状況で運転してみたい。パトカーは、普通のクラウンとかのパンダ仕様のやつがいい。でも、大型のバスは、どうせなら二階建てのスカニア製「アストロメガ」みたいな化け物級がいい。サーキットでアクセルベタ踏みしたら何キロくらい出るんだろう、という興味がある。ただ、ちゃんとまともに走らせられるかどうか全く自信はないけれども。その点、パトカーなんかは所詮はクラウンだから全然問題なく、そしてビーストだって全長全幅重量こそ規格外だろうけれど、まあそんなに苦労はしなさそう。ただ、超大型バスは自信がない。