本気でやめさせたいなら

徒歩、自転車、車での所謂「ながらスマホ」を本気でやめさせたいなら、チマチマと取り締まるより(もちろんやらないよりはやったほうが遥かにマシだけど)、もっとすごく簡単で、劇的に効果的な方法がある。

それは処罰の超厳罰化。たとえば、ながらスマホのチャリや歩行者を車で撥ね飛ばしても過失割合は10対0で、全面的に「ながらスマホ」の歩行者や自転車側に非があると認定して過失を10割にし、車のドライバーは無罪とする。もちろん、ながらスマホの車が事故を起こした場合は逆に問答無用で運転者が10割の過失認定。あと、言うまでもなく、ながらスマホのチャリや歩行者が加害者になった場合も被害者になった場合も同様。要するに「ながらスマホ」状態で何か起きた場合、常に、一切の例外もなく「ながらスマホ」側の過失を10割にし、何が起きてもシンプルに「電話を触っていたおまへが悪い」という設定で裁くことにする。また、加害者と被害者双方が「ながらスマホ」状態だった場合は、どんな状況であろうと公平に5対5。

これで「ながらスマホ」は激減するはず。この厳罰化に文句があるなら別に「ながらスマホ」をしなければいいだけだし、たかだか小さな電話機如きで人生終了するとなれば、みんな止めるはず。やめないならやめないでもそれは自由だけど、いかなる状況でも自分が損するだけ。もちろんこうなると「ながらスマホ」相手に「当たり屋」みたいなことをやる輩が出現するだろうけれど、それも仕方ない。嫌だったら「ながらスマホ」をやめておけばいいだけ。

だいたい、歩きスマホ状態で車やチャリに撥ねられても相手を責められない、電話を弄りながらチャリに乗っていて自転車同士でぶつかったり車に撥ねられたり飛び出してきた歩行者がぶつかってきて轢いたりしても電話が手にあるだけで100%の自転車乗りの過失、車に乗っていてたとえばオカマを掘られるとか普通なら相手が悪いような事故でも電話を触っていたがために自分の過失が10割……こんな馬鹿馬鹿しい話はない。

だから、ここまで理不尽な厳罰化をするなら、たぶんみんなやめる。そもそも、元々「ながらスマホ」をやらない人にとっては、これだけのふざけた厳罰化が行われても、自分に関係ないから文句も出ない。むしろ歓迎するはず。

そして、それでも「ながらスマホ」をどうしてもやめない人がいるなら、まあ自分が加害者か被害者になるまで電話と共に生きていってもらうしかない。

ただ、この厳罰化はどう考えてもあまりに乱暴で、まったく現実的ではない。でもこれくらいやらないと「ながらスマホ」の撲滅はおそらく何をやっても無理。

しかしこの世の面倒くさい問題の大半って、何かを「やる」より、何かを「やらない」ことで回避できるもののほうが多いような気がする。むろん全部ではないけれど、たとえば煽り運転なんかも、煽られるような運転をしなければいいだけだし、ながらスマホも、移動中に電話を触らなければいいだけ。というか、何かを「やる」というのはフィジカル面だけでなくけっこう心構えとか気合いとかメンタル面でも大変で難しいことが多いけれど、何かを「やらない」というのは、単にそれをやらなければいいだけだから、本来なら誰にとってもとても簡単なことのはず。だけれども、なかなか理屈通りにはいかないのが常に人の世だから、まあそこそこに折り合いをつけてやっていくしか仕方ない。