いなくなった人たち

スマートフォンの普及でいなくなった人たち……それは極端なブスやブサ男。いまは加工アプリでいくらでも盛れるので、どんな不細工でもそれなりになれる。もちろん実物は変えられないので現実世界は以前と何の違いもないけれど、少なくとも写真の中の世界はイイ男やイイ女だらけになってしまった。

それが良いことなのか悪いことなのかというと、たぶん悪いことではない。自分のようなオッサンでもまあまあ見られるレベルになるのは、そうとうインチキ臭くはあるけれど、悪い気分はしない。といっても自分の場合、加工は肌を綺麗にするくらいだけれど。基本的に眼鏡顔が多いので、たとえば顔を小さくしようと企んでヘタに顔の輪郭や眼を弄るとなんかおかしくなってしまう。

ただ、一人の自撮りは好きに弄りまくればいいけど、何人かで撮る時の加工は肌磨きくらいにしておいた方が無難。というのもヘタに自分だけ顔を小さくしたり体型を細くしたり小賢しい小細工を施すと他の人たちに変な影響が出て友人関係にヒビが入ってしまう危険性があるから。

だいたい自分は元々、加工とは違うけれど、免許証やパスポートの写真を撮る時、ジョーカノに薄くメイクしてもらっている。断るまでもなくカマっぽいガッツリとした化粧ではないし、口紅やアイシャドーなんかを塗りたくる訳ではなく、薄くファンデを塗ってもらって顔の赤みを消したり毛穴を埋めたりして肌を綺麗にさせる程度なので、別に見た目の印象がガラリと変わることはない。でも、ただそれだけのことで、写真の雰囲気はずいぶん違ってくる。何せ免許証は5年、パスポートは10年使うものなので、やはり変な写真は避けたい。とはいえ、ファンデくらいならあからさまに化粧をしている感じは全くないので、写真を撮られる際に不審がられることはない。尤も、業務として写真を撮っている係員の人はいちいち一人一人の写真写りなんか全く気にしていないだろうから、薄い化粧なんか気付くことはないだろうけれど。

なので、あんがい免許証やパスポートって妙に人相が悪くなってしまったりして写真写りが悪い男って多いと思うけれど、自分のモノを見せると「意外に綺麗に撮れとるな」という反応が多く、「薄くメイクしとるからなw」と種明かしをすると、「マジかw」と言った後、たいていは「おれも次からやってみよ」となる。

因みにいちばん最初にやったきっかけは、免許証の更新の際にテメエの面の出来の悪さを棚に上げて「写真写り悪いから嫌だわ」みたいな話をした時。そしたら「薄く化粧すればいいじゃん」と言われ、「男がメイクなんて変やろ」とこたえたら、「そんなガッツリしたのじゃないし、男でも意外に化粧して撮ってる人は多いらしいよ?」と言われ、試しにやってもらってみたら特に違和感がなかった。だから以来、免許証とパスポートの写真はそうやって撮っている。

化粧といってもこの程度なら別に全然オネエっぽくはならないから、写真写りが悪いと思っているオトコには、密かにオススメ。あと、わざわざ断るまでもないことだけれど、自分にソッチのケは全くない。