何かおかしい

ちょっと前から友人が、そこそこ遠い町で入院しているので、このコロナ禍に移動するのはどうかと思ったけれど、先日、見舞いに行った。今、病院はどこも面会制限が厳しいと思うけれど、それでもその病院はかなり限定的とはいえ面会が可能と聞いたので、別に生き死には関係なく、いずれ出てくるだろうけれど、世間ではけっこう感染が再拡大してきてこの先どうなるか分からない雰囲気になってきたので、行けるうちに行っておこう、と思った。とはいえ面会は「週に何日・何人まで」と決まっていて、平日の午後が指定されていたので、それに合わせなければならなかった。面会に関して病院は世の中の感染状況を鑑みながらフレキシブルに締めたり緩めたりするので、状況は日々変わり、油断できない。

なので、なるべく早めの平日に休みを取って出かけることにした。本来、そこまでくらいなら日帰りできないこともないけれど、ひとりで高速を使って車で行くし、疲れたら嫌だったので、一泊することにした。で、ついでにちょうど紅葉の時期だし、ちょろっと観光するくらいええやろ、と考え(個人的に桜はそうでもないけれど紅葉はかなり好き)、どこに泊まろうか、と思案しながら、マップを眺めた。そして、目的地の町の近くに決めた。

その町に決めた理由は、ネットで調べてみると、その自治体では、予約サイト経由で予約すると、めちゃくちゃお得なキャンペーンが行われていて、市内のホテルのほとんどが参加していることがわかったから。しかも世紀の愚策であるGOTOトラベルとも併用可になっていた。

要するに、その町独自のキャンペーンを使った価格がどれくらい魅力的だったかというと、GOTOと併用すると、一泊朝食付きで、支払い金額とほぼ同額分どころかキッチリ使い切ればプラスになってしまう額のクーポンや金券や市内複数の観光施設の入場券などが付いてきたから。ここで「実質タダ」と表現すると感覚的に間違いになる。正確には「払った金額の倍が使える」という感じ。なので、どうせひとりだし、ちゃっちゃと行って帰ってくるだけだし、と予約した。GOTOや自治体のクーポンが使いにくいモノだったら無駄だけれど、調べると市内の多くのレストラン等で普通に使えるようだったので、実質一泊三食付きプランという感じだった。

で、当日。
まずは何はともあれ指定の時間に病院へ行き友人を見舞った。予め「来てくれるのは歓迎だけど、金と花は絶対に要らんぞ」と強く言われていたので、それらの代わりに数独の本を渡してきた。何せそれほど厳密ではないとはいえ15分しか面会は許可されていなかったので、見舞いの時間はすぐに終わり、「じゃあまた、今度はシャバで」と病室を出て、移動し、一泊して、ちょろっと観光して、メシ食って、とっとと帰ってきた。

しかし、今回、コロナ感染拡大傾向のこの時期に移動したなんて褒められた行動ではないので、行き先などは全部ボカして書きながら、現地では各種キャンペーンを使っておいて何だけれども、この価格設定は頭がおかしいと思う。当たり前のように値引きがあり、更に支払った分の金券が付いてくるなんて、日本が健康を取り戻し、正常な価格に戻った時、業界はかなり強烈なリバウンドを食らいそう。いくら何でも劇薬すぎる。消費者としても、感覚的には宿泊代を払うというよりクーポンを買う感じで、こんなダンピングに慣れてしまったらヤバい。安いからという理由で旅行している人たちの中には、正規料金に戻ったらその割高感からキャンペーン終了後は出かけることを控える人もいそう。

何せ今回、宿泊代や高速代やガソリン代、コンビニとかでチマチマと電子マネーで払った分は別として、たぶん一泊二日で現金は二千円くらいしか使っていないと思う。というか千円札を使った記憶があるのは、ランチでクーポンに足して払った時くらい。こんなのは、どう考えても、おかしい。こんなことをずっとズルズルと国を挙げてやっていたら、ほんとうに何かが狂ってしまいそう。暇と小遣いがあって健康な連中なら、ここぞとばかりに出かけまくるに決まってる。

ただ、今回は友だちの見舞いのために出かけただけで、仮に全部正規料金でも行ったし、そもそも旅行と呼べるほどの距離でも日数でもないし、GOTO等は予約時に自動的に適用されたから使ったけれど、もう出かける予定も、そのつもりもない。この先、国がGOTOを頑なにやめなくても、感染拡大が収束傾向になるまでは、無用な軋轢を避けるためにも、お上の方針なんか放っておいて(どうせ「マスクしろ」「密を避けて」「旅行行け」「メシ食いに行け」しか言わない)、これまで以上に不要不急のお出かけはしないほうが良さげ。というか自分的には、出かけるとか出かけないとかムキにならず、これまで通りふつうに暮らすだけ。必要があれば出かけるし、用がないなら出かけない。というか、もともと誰だってそう暮らしていたはずだし、たかが旅行や外食で揉めるなんてアホくさいし、旅行や外食なんかしなくても別に死なない。世間に対して喧嘩腰になったり言い訳したりしながら遊んでも楽しくない。実際のところ今回だって、どこへ行っても検温だのマスクだのアルコール消毒だのばかりで、あんま楽しくなかった。ま、観光地で「ぼっち」だったということもあるけれども、何よりやっぱ観光客向けの「地元の名産系」のメシ屋がキツかった。慣れている人なら平気かもしれないけれど、普段のひとり旅の時は一人で高いレストランとかまず行かないので、今回、クーポンを使うために行ったらアウェー感がハンパなかった。

こういう言い方をすると身も蓋もないかもしれないけれど、個人でできる感染症対策なんて、たかがしれている。喩えるなら次々に家が燃えているのにホースで水をかけているようなもので、やらないよりはマシだろうけれど、きっちりと鎮火までもっていきたかったら、やはりちゃんと消防車を呼んで圧倒的な水量と水圧で放水し火を制圧しなければならない。だけれども、残念ながらいつまで経っても消防車は来そうにない。だから地道にホースで水をかけ続けるしかないけれど、結局のところ具体的にやれることなんて、できるだけ密になる状況を避け、あとは「検温・手洗い・嗽・マスク・アルコール消毒」くらいしか思い浮かばない。しかしそのマスクも、していない奴が目立つ。かといって、そんなことに目くじらを立ててもアホくさいし、どのみち自分のやってることだって所詮はザルだし、そもそも仙人のように誰とも触れ合わずに暮らしていくことはできない。だからどれだけ徹底しても限界があり、感染するときはしてしまうと思う。なので、絶対にゼロにはできない感染リスクをなるべく少しでも個人レベルで地道に減らしていくしかないのだけれど、人と会い、移動すれば、それだけリスクは上昇する。しかし、だからといってそういう機会をゼロにはできないので、できるだけ不要な接触と移動を削っていくしかない。つまり、堂々巡り。

正直なところ、自分でも今回はタイミング的にギリだったと思う。今週に入って一気に状況が悪い方へ変わってしまい、どうしようかと迷ったくらいだし、来週だったら行かないというか、ちょっと行けない。

とはいえ、政府はまるで何かに取り憑かれたかのように「行け」と言っているし、どこか出かけたい人は行けばいいと思うけれど、個人的には朝から晩まで政治家やマスコミから庶民まで「GOTO!GOTO!」と馬鹿みたいだから、もう勝手にやってて、という感じ。挙げ句の果てには「マスクしながらメシ食え」とか言い出す始末で、さすがにもう馬鹿馬鹿しすぎて付き合っていられない。ま、表に出てくる政治家はぜんぜん感染してないから、国民には「GOTOしろ」と煽りながら、たぶん自分たちはしっかり自粛しているのだろうけれども。