キョウフショウ

自分には、苦手というか、弱点がイロイロある。たとえば乗り物酔い。車の後部座席とかも嫌いだけれど、特に船が苦手で、基本的に乗らない。たとえ大金持ちになっても「豪華客船で世界一周クルーズ」なんてものには絶対に行かない。おそらくグラインド系の揺れがダメで、10分程度の航路でもちょっと海が荒れているとすぐに気分が悪くなる。船の大小はあまり関係ない。大きくても揺れる時は揺れる。だからできる限り乗らない。せいぜい瀬戸内海の渡船とか、その辺くらいしか無理。なので、竹富島とか波照間島とか行ってみたいと思うけれど、一生無理。船なんてものは、意外に揺れるイメージなんか殆どないのに実際に乗ると最悪というパターンもあるから油断できない。たとえば琵琶湖の竹生島へ行く船。湖は流石に余裕だろうと思って乗ったら、冬だったからか揺れまくって参った。また、ホノルル沖のサンセットディナークルーズ。あれも一度だけ、初めてハワイへ行った時にツアーに付いていたので嫌な予感しかなかったものの行かないと勿体無いのでイヤイヤ乗ったけれど、まあ危惧した通り酷く揺れてメシどころではなかった。ずっとデッキにいた。

それはともかく。
船酔いは苦手だけれど、恐怖症ではない。べつに船も荒れた海も揺れも、それらに対する気持は「恐怖」とは違うし、神経がおかしくなることもない。恐怖症というのは、心理的・精神的におかしくなってしまい理屈や根性ではどうにもならないものだと思うけれど、自分にはそういう恐怖症がひとつだけある。

それは、閉所恐怖症。狭く閉ざされた空間に入れられると、途端に強烈に気分が悪くなる。だから極端な話、エレベーターとか苦手。ただエレベーターはそんなに長い時間乗っていないのでまだ耐えられる。でも、外が見えるエレベーターだと乗った時の気分がぜんぜん違う。外が見えるだけでかなり気分が楽。

なので、狭い部屋がかなり嫌。しかも窓がないとなると、おかしくなる。たとえばカプセルホテルは絶対に無理。価格は魅力的だし、最近はなんかオサレ系のところもあってちと惹かれるけれど、いくら安くても泊まれない。あと、何気にヤバいのがシネコンの小さい箱のスクリーン。耐えられないことはないけれど、けっこうザワザワくる。

ホテルといえば、カプセルではないけれど、かなり昔、二泊三日だかで何かの研修に行かされたことがあって、その時が最悪だった。よく覚えていないけれど、なんかパッとしないビジホに監禁されて、部屋が個室なことはよかったのだけれど、そのシングルが激狭で、しかも本来なら窓があるべき場所に障子だかブラインドだかがそれらしくあったものの、開けると「壁」というふざけた造りで、閉所恐怖症にとっては地獄のような空間だった。滞在中、部屋に戻ることが嫌で嫌で、普通なら会議室等に拘束される研修の方が嫌だろうけれど、その時は自由時間の方が嫌だった。

どうして唐突にこんな恐怖症のことを書いたかというと、たまたま最近外国の刑務所が出てくる映画を観て、絶対無理だわ、と思ったから。だから何があっても刑務所や拘置場には入りたくない。というか入れない。雑居房よりは独房の方が気分的に楽そうだけど、狭さに耐えられないと思うし、暑さ寒さも耐え難いだろうけれど、それより先に自分の場合は空間の閉塞感と狭さでおかしくなること不可避。逆にいうと、自分を拷問したい場合、刃物や銃は要らない。ペンチで歯を抜いたり爪を捲ったりする必要もない。狭くて窓のない牢獄にぶち込むだけで充分。

因みに高所恐怖症とかはない。たとえば東京タワーの展望台にあるような、床が透けているような場所に立っても、当然足はすくむけれど、精神的に追い詰められるタイプの怖さは全く感じない。ハルカスとかも余裕だったし、実際、東京タワーなんか外の階段を歩いて降りたことがあるけれど、ぜんぜん平気だった。以前は苦手だった絶叫マシンも今は大好物で、日本一の高さから凄まじいスピードで滑り落ちるスチールドラゴンも恐怖心より爽快感が勝る。寧ろあれは落ちる時より上がっていく時の方が怖い。