ソウコウノツマ

これはまあまあセンシティブな領域の話なので、女子との会話の中でおおっぴらに言うと、たいていは返り討ちに遭ったりフルボッコにされたりする可能性が高いので、反論しない方が無難なのだけれど(外からはわからんだろう)と思うことがある。

それは何かというと、一発当てたミュージシャンとかが糟糠之妻を捨てて新しい若い女に走った、というパターンの是非の話になった時に、女子はたいてい「その男はクソ」みたいな拒絶反応と嫌悪感を露骨に示すけれど、オトコとしては(額面通りに受け取っていいのだろうか)と、いったん保留したい気持ちになる。

もちろん、全くそのまんま、テメエの金回りが良くなった途端に、ワラワラと寄ってくる若くて綺麗なオンナたちの中から選りどり見どりでピックし、それまで食わせてくれていた古女房をさっさと捨てて乗り換えるなら、そいつはクソだと思う。だけれども、オトコの立場で考えると、売れてからその糟糠の妻が、何かにつけて「アンタを支えたのはワタシ」みたいな態度で、その主張を匂わせたり常に突きつけてきたりすると、確かにそれはその通りなのだろうけれど、オトコとしては鬱陶しいしキツいだろうな、と思う。で、その結果、新しい女へ行く、というなら、それは仕方ない気もする。

ただし、こういうことは、適当な女子相手に言ってはいけない。よっぽど仲が良ければいいけれど、たとえば単なる同僚とかクラスメイトみたいなレベルの子との会話で「オンナの方にも問題があったんじゃねーの?」とか「どうせオンナの方が恩着せがましく『食わせてやった』みたいな態度でウザかったんだろう」みたいなことは言わない方が無難。内情はどうであれ、窮状を脱したからといってキツい時期を支えてくれた相手を羽振りが良くなった方から捨てるのは、それが男からでも女からでも、シンプルに印象が悪い。これは理屈ではなく、感情の問題。唯一、妥協点があるとしたら、もちろん部外者は関係なく、当事者同士の間で、それ相応の手切金で解決できる場合。糟糠の妻が「アンタなんかもういい、銭よこせ、それで縁切りだ」で納得できるなら、それ以上に理想的な解決策はない。

といいつつ、きほんヒモ体質の自分からすると、一発当ててドカンと儲かることがあったとしても、食わせてくれたオンナを捨てることは考えられない。まあ、そんな夢みたいなことが現実化したことはないので、いざ実際にそうなったらシラッと方針転換してしまう可能性もないとは言い切れないけれど、たぶんしない。なぜなら、いつまた落ちぶれるかわかったものではないし、常日頃から女子には年がら年中「食わせてくれ」とか「養ってくれ」とか言っているような人間なので、せっかく食わせてくれていた女をこちらから捨てることはありえない。若くて綺麗な女が寄ってくるなら、もちろんそれは良いことだし、食指は動くけれど、そういうふうに寄ってくる女たちが食わせてくれたり養ってくれたりするとは思えないので、糟糠之妻の方がぜったい良い。百歩譲って、他の女に手は出したとしても、糟糠の妻は大事にしまってキープしておくべき。

ところで。

話はぜんぜん違うのだけれど、今年の夏は異常にクソ暑すぎるからか、単に気のせいか、たまたまなのか、蚊に全く刺されない。というか、いない。ノーマットもほとんどスイッチを入れていないし、ムヒを塗った記憶もない。ゼロではなく、たぶん7月頃はたまーにいたかもしれないけれども、少なくとも8月になってからは一度も刺されていない。ベッドでウトウトしていたりテレビを観ていたら不意に耳元でブーンとか、ぜんぜんない。蝉の声も、あまり聞かない。うちはGは出ないのでわからないけれど、虫どももこの暑さにはへばっているのではないかと思う。ただ、山とか藪とかには入っていないので、そういうところにはふつうにいるのかもしれないけれども。

蝉は先日、ひっくり返って干涸びかけてるのを、路上で一匹見た。