横罫の問題

まあ問題というほどのことではぜんぜんないのだけれど、自分はノートの使い方に変なクセがある。それは綴じノートだろうがリングノートだろうが、とにかくどんなノートでも基本的に右ページしか使わない。ふだん持ち歩いているトラベラーズノートのリフィルもそう。無地とか方眼とか横罫とか適当に気分で使い分けているけれど、やはり右ページにしか書かない。昔、システム手帳を使っていたときもそうだった。

そしてフォーマットは結局のところ、横罫がもっとも書きやすい。無地や方眼も良いけれど(というか一時はかなりかなり方眼を気に入っていた)、横罫がいちばん罫線をガイドにしつつもその存在を気にしなくて済むから楽。方眼は、マス目をガイドにすればインデントとか簡単に整えられて便利ではあるのだけれど、何かを書いていくときに結局マス目を意識しなければならないことが、地味に面倒くさい。その点、横罫だと、とりあえずラインを意識しなくてもそのまま書ける。

ただ、この横罫にも、自分には変なコダワリがある。まず、なるべく罫線の間隔が広い方がいい。そして文頭を揃えるためにも、リーガルパッドみたいに端から数センチの位置に縦に線(正確にはマージン罫というらしい)が入っているのがベスト。このパターンがもっともフォーマットを意識せずに好きに書いていける。それらの線は勝手に目に入ってくるのだけで、いちいち意識する必要がない。自分がノートに何か書くときは頭に浮かんだことを殴り書きしていく感じのことが多いので、字が汚くて乱雑(後から自分で読めないことも珍しくない)。

しかし、こういうフォーマットのノートって、案外ない。まず、縦に線の入っているものが劇的に少ない。アメリカだとmeadというメーカーの安いスパイラルノートでもけっこう多くの横罫のノートに赤いマージン罫が入っているのだけれど、国産でなかなかない。以前、何かないかな、と少しだけネットで調べてみたことがあって、そうしたらライフにマージンノートというものがあったのだけれど、価格が千円以上もした。しかも罫線の幅が6mmで、価格はひとまず無視するとしても幅で選択肢から外れる。というかトラベラーズノートの横罫なんかもそうだけれど、横罫のノートって幅が6mmとか7mmとかが主流で、それ以上に広いものがなかなかない。自分の中では、どうせなら罫の間隔が広いことが、縦のマージン罫より優先される。更に希望を述べるなら、その罫線は薄めのものが良い。トラベラーズノートの横罫も自分的にはやはり狭いし、ちょっと色が濃い。罫線の色が濃いと無視して2行で1行みたいにして書くにしても意識が引っかかる。

それでもこれまでは、クレールフォンテーヌというおフランスのメーカーの300円か400円くらいの定番のホチキス留めノートが、このフォーマット(横罫幅8mm、マージン罫アリ)にドンピシャで、迷う必要がなかった。サイズもちょっと大きめとちょっと小さめの二種類あって、ロフトかハンズなんかへ行けばいつでも売っていて手軽に買えたのだけれど、なぜか最近は全く売っていない。少なくとも自分の行動範囲内のロフトやハンズではクレールフォンテーヌの扱い自体がないっぽい(メーカーのサイトの取扱店舗には載っているけれど)。で、そうなると、もともと幅8mmという広い罫線のノートが、コクヨやツバメなどどこでも入手しやすいメーカーのラインナップになくて困る。どのメーカーもA4とかB5とか大きいサイズだとあるみたいだけれど、最も使いやすいA5で8mm幅はなく(たぶん)、しかもひとまずサイズが大きくなることを我慢するとしても、ツバメなんかは横太罫といシリーズがカタログにはあってい感じなのだけれども売り場で見ない。カタログ上なら罫線の幅が10mmというのもあるみたいだけれど、実物にはお目にかかったことがない。コクヨのキャンパスはB5やA4ならU罫とかUL罫とか太いのがあるのだけれど、キャンパスとどうしても学校を思い出してしまうので、あまり積極的に欲しいと思わない。

で、まあ売っていないものはどうしようもないので、妥協案として、クレールフォンテーヌのノートにかなり近いのが、ロディアのホチキス留めの横罫ノート。これは縦のマージン罫がないことを除けば、8mm幅だし、クレールフォンテーヌと同じ会社の別ブランドなので紙もおそらく同じで厚くてしっかりしていて、罫線の色も濃くはなく、使い勝手や質感がほぼ変わらない(たぶん)。価格も一冊500円弱でたいして変わらず、サイズはA5だし、確か48枚綴じなので意外に分厚く(それでいて軽い)ボリューム的には充分。

という感じで、今のところはロディアのホチキス留めノートがベストではないけれど、ほぼベターと思って使っている。できれば、ページの端から三センチくらいの位置で縦に一本薄い赤の線を入れて欲しいけれど。次点は、ツバメの横罫A5。これもマージン罫はないけれど、罫線の間隔が7mmなので、6mmのものほどは狭くなく、耐えられる。1mm刻みの違いだけれど、6mmと8mmで2mm値違うとかなり感覚も変わる。そしてマージン罫があった方が良い理由は、文の頭を揃えやすいこともあるけれど、後から少し追記する時に、その空いているスペースを使うことができるから。尤もマージン罫ってどういう意味で入っているのか、その確かな理由は知らない。また「そんなにいるなら縦の線くらい自分で引けばいいだろ」と言われそうだけれど、やはりいちいち自分で引くのは面倒くさい。

というか、ひとまずロディアは置いておいて、トラベラーズノートのユーザーとしては、革カバーの限定ばかり連発していないで、定番のノートリフィルにも選択肢を増やして欲しいところ。MD用紙は紙質には全く文句はないのだから、8mm以上の幅の横罫で縦線アリというリフィルを出してもらいたい。前述したように、方眼はマス目を意識しないと綺麗に揃わないし、無地は気をつけて書いていても文字が波打つみたいになったり斜めに下がっていったりしてぐちゃぐちゃになってしまうから、やはり横罫が書きやすい。

つまり自分的には、罫線は薄く、幅は8mm以上、そしてマージン罫アリ、これがベスト。で、価格はせいぜい五百円くらいまで。今どきノートなんてキャンパスとかならもっと安いし、何なら100均でも色々あるので(セリアの万年筆のロゴがついているシリーズのリングノートなんかあんがい良いくらい)、おフランスの五百円弱ノートは勝負にならないのかもしれない。どうせたいしたことを書くわけでもないので、500円という価格はコスパ的に良くはない。無印のスタンダードなノートは低価格で見た目もシンプルで良いのだけれど、やはり罫線が濃くて幅が狭い。

そもそもこの頃はロフトもハンズもノート売り場よりダイアリー売り場の方が大きい顔してフロアを占めていて、ノート類の選択肢がだいぶ寂しくなっている気がする。