思うことはみんな一緒っぽい

春頃に開局したBS松竹東急にはレギュラーで映画の枠があり、興味が惹かれた洋画をやっているときに時々録画して観ている。ただ、他にもけっこういろいろな録画の在庫が溜まっているので、消化は遅れがち。でも、なんとか少しずつ観ている。

この映画の枠は、他の局の映画とちょっと違っていて、面白い。というのもメインの作品のあとに10分から20分程度のショートムービーがオマケのように付いてくるから。そして、この短編映画になかなか良いものが多い。ぶっちゃけショートムービーって観る機会が全く無いのでけっこう新鮮。毎回興味深く観ている。

で、もう、ちょっと前に放送されたものになるのだけれど最近「シェイクスピア・イン・トーキョー」という映画を観て、かなり良かった。外国人監督が東京を舞台にして撮っているのだけれど、第一印象としてまず強く思ったのは「外国人がトーキョーを撮るとなんでこうもカッコイイんだ?」ということ。逆に日本人がニューヨークやパリを撮っても、別にそんなに特別格好良くはならない。この違いは何なのだろう、と思ってしまう。

この映画は、外国人が日本を撮る時にありがちな、フジヤマゲイシャ的なノリはなく、ブレードランナー的アジアのようなバチモン臭さもなく、とにかくスタイリッシュに現代のトーキョーを切り取っていて、どんな映画なのだと思いつつ検索してみると、観た殆どの人が同じような感想を抱いていて、思うことはみんな一緒っぽいな、と思った。そして、まあガイジンがこれ観たらニッポンに幻想を抱いて来たくなるかもしれんな、と感じた。

それにしてもこの短編映画、外国人監督でメインキャストも外国人で、日本人側も故千葉真一さんみたいなビッグネームがサラリと出ていて、どう見ても外国映画の雰囲気なのに制作国は日本になっていて、どういうことかと疑問に思い、ネットで調べてみたら、経緯がちょっと変わっていた。俳優の別所哲也さんが代表を務めるムービー関連の会社と東京都が組んでいて、最初から海外向けの観光プロモーション絡みで作られたようだった。そういう意味では、この映画は成功していると思った。確かにトーキョーをよく知らない外国人を誑かすには、出来すぎるほどよくできていた。うちら日本人でさえこれを観たら不覚にも、トーキョーってカッコええな、と思ってしまった。現実を知っているとギャップはかなりあるけれども。でも、少なくともコッポラの娘が撮った「ロスト・イン・トランスレーション」よりはずっと良かった。あれは世間的に評価高めの印象だけれど、個人的には何がそんなにいいのかよくわからんし。ただ「ロスト〜」を観た時も「なんで外国人が日本を撮るとこんなにカッコイイんだ?」とは思ったけれど。

また、日本を舞台にした映画というと有名どころでは「ブラックレイン」があるけれど、あれはあれでちょっと意味合いが違う。確かに大阪の風景とかは格好良く撮れていたけれど、全体的には「ちょっとおかしなニッポン」だし、あれを観た外国人が日本に憧れることはなさそう。カテゴリとしては「WASABI」なんかもたぶん同じ。ただ「WASABI」はコメディタッチだし、ジャン・レノ広末涼子くらいしか有名な役者は出ていない。それに比べて「ブラックレイン」は外国側も日本側も俳優が超一流揃いなので、単純に映画として格上っぽいし、格好良い。とくに日本側のキャストが若山富三郎高倉健松田優作と日本映画界のトップクラスが共演していて豪華すぎ。

それにしてもインターネットは、このところ特にコミュニケーションツールとしては負の面が強めに出ている気がするけれど、情報探索ツールとしては、やはりその進化と恩恵は素晴らしいと思う。よく知らない短編映画のことを調べようと真夜中に思い立っても、ソファに寝転がったままiPadでブラウザを立ち上げてキーワードをサーチエンジンに投げるだけで、簡単に大体の情報が得られる。もしもネットがなかったら、どうやって調べたらいいのか見当もつかない。本屋か図書館が開くのを待って出かけて行き、適当に目星をつけた本や雑誌の記事をあたるくらいしか思いつかない。