ヒガサ

たいして雨も降らず超短期間で梅雨が終わり、いきなり真夏がやってきた。

こんなに早く梅雨が明けたなんて、ほんとうにちょっと記憶にない。そしてもう連日、クソ暑い。なんだかまだ7月になったばかりだというのに、ともするともう8月に入っているように錯覚しそうになる。ほんとうに朝から夜中までクソ暑い。日本の夏は湿度が半端ないので、息苦しい空気が湿り気を帯びた真綿のように重くのしかかってきて体に堪える。気温が三十度を超えても、湿度がなければそんなにキツくはない。つまり敵は湿度。とはいえ晴れた日の炎天下はふつうに暑くて地獄。そんな真夏の路上で役に立つアイテムが日傘。ささやかな抵抗だけれど、今年ももちろん使っている。

個人的にはもう二、三年前から夏には日傘を使っているので、「男の日傘云々」という話題には今更感がかなり強い。いちばん最初はいかにも女物の日傘を貰って使っていたので、そこはかとなくチンピラ感があったけれど、それが壊れて自分で買ってからはユニセックスな感じの無難なモノにしたので、とくに違和感はなくなった。そして今では当たり前のように使っている。

はっきり言って、男が日傘を差すなんて、最初は抵抗があると思う。自分もあった。でも、一度差してしまえば、どうってことない。「男のくせにアイツ、日傘差しとるぞ」的な視線って、べつに感じない(自分が鈍感なだけかもしれないけれど)。むしろ今年はだいぶ男の日傘が市民権を得てきたのか、自分以外にも差している人をしばしば見るし、けっこうなオッサンなんかも差している。

確かに、荷物にはなる。単純に、出かける際にひとつ荷物が増える。しかし日傘って雨用のアンブレラに比べて軽くて短めで華奢だし、そんなに苦にならない。自分は持っていないけれど何なら折り畳みもあるし、もしトートバッグとか肩にかけていれば、長いものでも差さない時はその中に突っ込んで持ち運べる。雨用の傘は雨降りに使えば濡れるけれど、日傘はどれだけ使っても濡れないし汚れないので、手で持っていてもそんなに邪魔ではないし、バッグに入れてもとくに問題はない。

なので、荷物は増えるものの、自分的に夏の日傘は手放せない。その恩恵は、持ち運びの面倒さを差し引いてもあまりある。女子と違って「日焼けしたくない」から差しているわけではない。ただ単に「少しでも暑さから逃れるため」だけに差している。

一度でも実際に差してみればわかることだけれど、日差しの暑さの体感が全く違う。単純に、ずっと日陰の中を歩いているようなものだから、ダメージが半分以下になるとはいわないけれど、三割・四割減くらいにはなって、かく汗の量が違ってくる。直射日光が打ちつけるアスファルトの上を、日傘を差さずに歩いている時と差して歩いている時とでは、汗のかき方が違う。さすがに日傘で直射日光を遮っても真夏の路上の空気の暑さは変わらないので涼しいとはいえないけれど、直に日差しを受けるのと受けないのとでは、汗の出方と体のダメージが違う。

正直、なんとなく体感として、今年はなかなか暑くならなくて、心のどこかでちょっと夏をナメていたかもしれない。六月の半ばなんてまだ涼しい日があったくらいだし、別に記録しているわけではないので正確なところはわからないけれど、例年に比べて、扇風機を出したのも初めてエアコンを使ったのも、遅めだった気がする。しかし、いきなりドカンとクソ暑さが来た。こういうタイプの季節の移行はなかなかキツい。

それにしても日本国は馬鹿の一つ覚えで「インバウンドインバウンド」とお題目のように唱えているけれど、外人はこんな呼吸することにさえ苦しさを覚えそうなほどクソ暑くて生き地獄のようなニッポンになんか来たいのか? と不思議に思う。しかも円安が酷すぎてお買い物をするにもモノの値段が割高でお得感もないだろうし。

まあいずれにしてもさっさと夏が終わり、涼しくなってほしい。というか梅雨が早く終わったのだから、それに合わせて夏も早く終わるべき。もうほんとこれだけ毎日暑いと何するにもダリ〜し面倒くさいので何もやる気にならない。ここまでくると冗談ではなくエアコンが壊れたらほんとうに命に関わりそう。