マスクバンザイ

数日前、おやつの時間に井村屋のあんまんをチンして食べた。今は中にザルが付いた電子レンジ用の便利な蒸し器が百均にあって、それに入れて3、40秒チンするだけで、かなりいい感じに温められる。

ただ、ふだんはほとんどあんまんなんて食べない。肉まんとかピザまんとかならたまに食べるけれど、あんまんはちょっと記憶にないくらい久々。でも、スーパーマーケットへ行ったときに見かけて、なぜか無性に食べたくなって、買った。

で、一個だけ蒸し器と一緒に持って家を出て、休憩時間にチンした。そのとき、あんまんなんてめちゃくちゃ久しぶりなので、なんとなく40秒チンしたのだけれど、そうしたらかなりいい感じに出来上がった(確か袋には600wで30秒と目安が示されていた気がするけど)。それでも、べつに商品にケチをつける気はないのだけれど、ガキの頃に食った記憶の中の井村屋のあんまんより一回りは小さくなっているように思えた。PAOPAOの肉まんほど大きかったとはいわないけれど551の豚まんくらいはあった気がする。

それはともかく、手に持った感じも適度に熱いという感じで、思いのほか上手くできたな、と自画自賛しながらガブリといった。そうしたら、外側の皮の部分はちょうど良かったけれど中の餡が熱々になり過ぎていて、口の中を火傷しそうになったので、反射的に、咀嚼する前に吐き出した。その咄嗟の判断によって、行為の見た目の下品さはともかく、ギリギリで口の中の火傷は回避できたものの、代わりに、出した餡が唇にくっついてしまい、それを取ったら、そのままベロンと唇の皮も剥がれてしまった。

これがもう強烈な痛さで、ビジュアル的にも酷い状態になってしまった。といいつつ、残りのあんまんは冷めてから取り敢えず全部食べたのだけれど、唇はその間にもみるみる腫れ上がっていき、もうほんと下唇の半分だけ皮が剥がれてぷっくりと膨らんでしまった。なんというかタラコ唇の成り損ないみたいで、ただでさえブサイクなツラが更にみっともなくなった。しかもピリピリと痛くて、まるでアソウタロウみたいに自然と口元が歪んでしまって、喋りにくいというか、上手く喋れなくなった。感覚的にも歯医者で麻酔を打たれた時みたいに変な感じが全く消えなかった。そして、ぶん殴られたボクサーみたいに、一晩寝たら更に腫れた。

唯一の救いがあったとすれば、今は四六時中マスク着用がデフォなので、この無様な唇を隠せたこと。ティッシュを小さく畳んで薬を塗った唇にあててマスクをしてしまえば、外からはわからない。幸い、皮は丸一日ほど経つと薄く再生されてきた。しかしゴワゴワ感が残り、逆に唇が引っ張られてしまって口を大きく開けられなくなり(ヘタに動かしたら切れて血が出そう)、喋ることも食べることも余計に厄介になった。でもって、唇は腫れたままで痛く、その違和感のために自然に口を歪めてしまい、結果、無意識のうちにずっと顔を顰めてしまっていて、不機嫌極まりない顔になってしまうことが避けられなかった。マスクの下で腫れた唇を歪ませ、痛みにイライラするうちに眉間に皺を寄せてしまい、我ながら非常に人相が悪いとは思ったけれど、どうしようもなかった。

実際、当日の夜は何人かでうどんを食いに行くことになっていて、待ち合わせ場所に行くとみんなから「おまへ何か怒ってんの?」とか「何を不機嫌な顔してんだよ」とか言われ、マスクを取って喋りにくい口で事情を説明すると「バカじゃねーのか(笑)」と散々な言われようで、しかしその通りで全く反論できなかったので「はいはい」とこたえておいた。

で、うどん屋では、この頃ようやく地球も冷えてきたし、ほんとうは温かいものを食べたかったのだけれど、ひとりだけ季節外れの冷たいうどんと天麩羅を食べた。その天麩羅も当然ながら、せっかく熱々の揚げたてが出てくるのに冷めてから食べた。

しかしまあ、単なる自分の不注意なのだけれど、酷い目に遭った。それでも久々の井村屋のあんまんは美味かった。まだ二個残っているので、そろそろ残りは慎重に、ちゃんとフーフーして冷まして食べようと思う。

そして、何はともあれ、マスク万歳。