目と口

マスクの話になると、外人はマスク自体に抵抗あるからしたがらない、日本人はもともとよくしてるし抵抗がないからする、みたいな決め方があるけれど、まあそれはあるかもしれんな、と思う出来事があった。この設定の根本というのは、外人は相手の口許を見て感情を読み取りコミュニーケーションを円滑にする、日本人は相手の目を見て感情を読みコミュニーケーションを円滑にする、ということで、外人は口を隠されるのが苦手、日本人は目を隠されるのが苦手、ということになるのだろうけれど、こういう面はあると思う。

というのも先日、ちょっと買い物しようとひとりで車でモールへ行った。で、家を出る時からサングラス(度付き)をしていて、着いて車の中でメガネに替えようとしたら、鞄の中に入っておらず、忘れてきたことに気づいた。でも、まあ仕方ないので、サングラスのままモールに入った。そうしたら、とにかくもう違和感ありまくりで困った。周りに人はたくさんいたけれど、サングラスをかけている人なんて誰もいない。皆無。そんな中、自分ひとりだけサングラスにマスクという格好で歩いていると、強烈な居心地の悪さを覚えた。そもそも視界が暗い。かといってサングラスを外してしまったら、自分はド近眼なので何も見えなくなるから、外すという選択肢はない。

そんな状態で歩きながら、これが外国と日本の違いだな、と感じた。海外なら、サングラスのままスーパーマーケットやショップやモールに入っても、そんな人はいくらでもいるからぜんぜん平気。しかし日本では、まずサングラスのまま屋内にいる人はいないから、完全に浮く。ただ、国内でも、街中の外ならサングラスのままでもそんなに違和感はないし、ちょっとそのままコンビニへ入るくらいなら、いちいちメガネに変えず、サングラスのままということはよくある。しかし、サングラスをかけたまま、というか目が見えるくらいの薄い色付きのレンズならいいだろうけれど、タモリさんとか陽水さんとかマーチンみたいな、目が見えないレベルのサングラスだと、途端にどうにも居心地が悪くなる。自分が運転中とか外でかけるサングラスはほとんどそれくらい色の濃いやつ。というか自分は、眩しがりで、明るすぎると目を開けていられないので、格好付けではなく、実用的な意味でサングラスがないと困るタチ。

ま、それはともかく、かけているこっちの違和感もそうだけれど、相手をしてくれる店の人も目を隠した相手とは接客しにくいと思う。これが外人の場合の、口許を隠すマスクと同じ意味になるような気がした。要は、外人の場合、サングラスで目を隠されていてもべつに気にならないものの、口許を隠されると、相手の表情というか感情が読み取れなくて、意識が軽くバグるのだろう、と思った。

だいたい日本人同士でも、こちらが裸眼やふつうのメガネで、相手が黒いサングラス姿だと、正直会話はしにくい。それが外人にとってのマスクで、あいつらは相手がマスクをしているとコミュニーケーションが取りにくいのだろうと思う。つまりマスクが良いとか悪いとか以前に、単なる文化の問題のような気がする。

つまり外人は口許を隠されると不安になり、日本人は目を隠されると不安になる。そんな感じ。こういうのは、人に説明されて理屈ではわかっても、実際に体験しないと実感は湧かないと思う。