一生モノ

といわれるものは、巷にけっこうある。たとえば高級な腕時計。何十万から何百万、下手すりゃ何千万なんてものもあって、よく「この時計は一生モノだ」なんて言う。確かにそれはその通りだろうとは思う。ただ、時計は壊れる。しかもたとえばロレックスなんか、なまじか自分のような奴が分不相応に持つと、何回も壊れる度に、その修理代にウンザリする羽目に陥る。また、死んだじいちゃんから貰った50年くらい前のオメガがあるのだけれど、ベルトがボロボロになっているうえ、もう何年か前から完全に止まっていて、オーバーホールなんかするといくらかかるかわからないので、そのうちには直すかもしれないけど、今はそのまま放置している。こう考えると、時計は少なくとも自分的にはイマイチ「一生モノ」とは言いにくい。

で、何かあるかな? と手持ちのいろいろなモノたちに思いを巡らせてみると、自分的に「これは一生モノだな」と胸を張って言い切ることができるものが、とりあえずひとつあった。

それはL.L.Beanのトートバッグ。実際にもう20年以上使っているスタンダードなトートがあるのだけれど、全く壊れていないし、壊れそうな気配すらない。使っている限りはもちろん汚れはするので、公式には洗濯不可だけれどもう何回となく洗っていて、確かにハンドルや底の部分なんかは色落ちしている。しかしこのバッグにとって色落ちは寧ろ「いい味」になっていて、ぜんぜん問題ない。かなり乱暴に使っているし、時にはかなり重たいものも入れているけれど、持ち手の部分とかが捥げることはないし、この先も捥げそうな予感はない。しかも、何回となく洗濯機にぶち込んで丸洗いしているわりに全くクタクタにはなっておらず、相変わらず生地は硬いし、置けばちゃんと自立する。

というわけで、これはもう「一生モノ」と言わざるを得ない。

あと、次点では、トラベラーズノートのカバー。これも、要はシンプルな一枚の革なので、ノートの供給さえ絶えなければ「一生モノ」のノートといえそうな気がする。ただ、革を良い状態で維持する為にはどうしても最低限の手入れが必要だし、ゴムが伸びたら交換もしなければならないので、総合点ではやはりL.L.Beanのトートバッグに敵わない。

因みにノートだと、たとえばモレスキンなんかは値段のわりに全く一生モノとはいえない。保管してあるすべてのノートのゴムが完全に伸びきってしまっていて、そうとうみっともない。