勝手サブスク

うちから駅までの経路のちょっと外れた場所に、神社というか祠に毛が生えたような規模の無人の社があって、ときどき、まあだいたい月に二、三回、パンパンしに行く。そこは雑居ビルに囲まれた狭い地所にあるほんとうに小さな神社で、もちろん社務所はなく、普通の賽銭箱すらなく、祠の前になんかポストみたいな金属製の高さ一メートルほどの四角い筒のような箱が設置されていて(盗難防止のためか底部がボルト留めされている)、上部に硬貨の投入口があり、その下に『賽銭』と記されている。おそらく防犯カメラもないだろうから、賽銭泥棒対策で、そういう賽銭箱が設置されているのだと思う。

でも、いちおうGoogleマップには神社として載っているし、看板に祭神も明確に記されていて、そこを管轄している別の大きめの神社が例祭もしているみたいだけれど、それに行ったことはないし、そもそもそこで誰か他の人と遭遇することなど滅多にない。それでも、うちからたぶん一番近い神社だし、今年とか年によっては吉方位にハマるので(直線距離で1.5キロほどあるので恵方参りの条件にいちおうギリで合う)、たまに参拝に行く。

ただ、そんな小さすぎる神社だし、防犯のためとはいえ情緒のかけらもない賽銭箱に、いちいち賽銭を入れるのもなんか面倒なので(我ながら「面倒」という表現は不遜でどうかと思うけれど実感だから仕方ない)、毎年、年明け一発目に行った時に、勝手に一年分の賽銭として千円札を小さく畳んで入れている。で、その後、一年間は、賽銭箱をスルーしてパンパンしている。要は賽銭勝手サブスク。

なので普段は人が見たら「賽銭も入れずに参拝している人」と思われるだろうけれど、まあ人の目なんかどうでもいい。そもそも神さまや仏さまは銭を要求なんかしてこないし。ただ、このことを人に言うと「賽銭のサブスクなんてええんか? 聞いたことねーぞw」と突っ込まれる。でもこちらの考えとしては、これはあくまでもこの無人の小さな社だからそうしているだけであって、いちいち五円とか十円をその都度入れるより、先にまとめて入れておいた方が気兼ねなく手ぶらで気楽に行けるからそうしているだけ(ウォーキングの時はきほん電話と飲み物しか持って行かないし)。というか、たまに小さなアホな神社が「入金手数料で赤になるから一円玉は入れるな」とかSNSで発信してニュースになるくらいマヌケな世の中なので(気持ちはわかるけれど発信したら終わり)、管理している方もこの方がいいんじゃないか、と勝手に思って正当化している。まあ頻度で考えれば千円札ではなく500円玉でもいい気はしているのだけれど。

いやらしい話だけれど、仮に毎回十円で月3回、年間36回、多く見積もって50回行くとしても、賽銭の総額は500円程度。5円なら3日に一回行っても、1年でそのくらい。それを先払いのまとめ払いで千円入れているのだから、神さまも許してくれると思う。そもそもぜんぜんそんなに行っていないし。

もちろん、ふつうの規模の寺社ではやらない。今は夜、適当にウォーキングをしているので、その目的地設定として月に数回、うちから数キロほどの距離にあるいくつかの寺社を気分で選んで行っているけれど、その近所の社以外は、毎回チャリンチャリンと入れている。因みにそういう時は、財布は持っていかないので、ポケットに5円玉や10円玉を一枚だけ入れて行く。ちなみに初詣は超大手へ行ったので、年に一回のことだし、もう少し入れた。

というか、ウォーキングで行くのは夜なので、たいていの寺社は暗くひっそりとしていて、賽銭箱周辺には人感センサーがあって、近づくと明かりがつくし、たぶんどこかにカメラもあって、なんか居心地は悪い。正直、情緒もクソもない。でもまあ賽銭泥棒対策としては仕方ない措置だとは思う。