初泥

数週間前に、通話用の3Gガラケースマートフォンに変えた。少し前から事あるごとにキャリアから「変えろ変えろ」という無言の圧力がかかかっていたけれど、3Gが廃止されるまで変える気は全くなかった。しかし、ちょっと状況が変わった。というのもガラケーからの機種変更なら一括ゼロ円という機種が出てきたから。

そのことを知ったのは、偶々だった。モールに入っているショップの前を通った時、店頭のポップを見てそのキャンペーンを知った。で「本当にタダで端末をくれるの?」と確かめると、本当だと言われた。変なオプションの強制もないことも確認した。それでも正直、いくらタダと言われてもショボいスマホなら食指は動かなかった。スマホはデータ専用SIMを挿したiPhoneがあるので、どうしても欲しいわけではなかった。しかし、キャンペーンの対象機種にはPixel 4が含まれていたので、俄然興味を惹かれ、訊いてみた。

「XLの128でもいけるの?」

すると「それも対象にはなっているんですけど今は在庫がもうなくて、コロナの影響で全然入ってこないし、入荷の予定もわからないから予約も受けられないんです」という返答で「Pixelは無印の64の白が一台残っているだけで、黒とオレンジももうないんです」と言われた。

ここで迷った。どうせならXLの128が良かった。というのも、その機種は友達が持っていてバッテリーの持ちとかカメラとかけっこう良いと聞いていたから。ついでに言うなら、色も本当はオレンジが良かった。しかしショップの人の話では入荷は未定だし、他のショップでも同様のキャンペーンはやっているが多分どこも在庫切れだと思います、ということだった。で、「もしも探すなら、いちいち店へ行く前にとにかく片っ端から電話をして在庫の有無を訊いた方がいい」とも勧められた。「嫌がられない?」と訊くと「全然問題ないです、寧ろ絶対に電話で確かめてから行ったほうがいいです」と言われた。

しかし、期待薄のものをわざわざ探しまくるのも面倒くさそうだったし、そもそも機種変更なんかする気は微塵もなかったのに偶然ポップが目について、更に、良いと思う機種の最後の一台がまだ残っていたことに、これも何かの縁だろうと思い、その場で機種変更を即決した。Pixel 4は所謂 pure android 端末なので、キャリアによってヘタにゴチャゴチャ弄られていないことが利点で、iPhone以外なら他に欲しいAndroid機はなかった。

とはいえApple製品以外のコンピュータ系の機種は初めてなので、その点にはかなりの不安があった。ぶっちゃけ使い方が全くわからない。操作の感覚はジェスチャー主体なのでいま持っているiPhoneとあまり変わらない感じらしかったけれど、OSの基本操作がわからないので、使いこなせるかどうか不明だった。ただそうは言ってもたかが電話なので、まあなんとかなるだろう、と思った。

機種変更自体は簡単だった。セットアップをやってもらい、既に持っているGoogleアカウントと、スマートログインやPayPayに必要なYahoo!アカウントの設定までやってくれた(というか設定自体はプライバシーの関係で自分でやったけど、やり方を丁寧に説明し指示してくれた)。電話帳はもともとGoogleアカウントでバックアップしているので、ガラケーからのデータ移行の必要はなく、問題なかった。機種変更を機にポイントの付与がTポイントからPayPayになったので殆ど強制的だったけれど、今回とうとう「なんちゃらペイ」デビューをしてしまった。まだ使ったことないけど。

というわけで、その日からiPhoneとPixelの二刀流になったのだけれど、まだなかなかアンドロイドには慣れない。それでもスマホとしてのPixel はかなり気に入っている。iPhoneAppleの奴隷になるように、Googleの奴隷になることを割り切ってしまえば、こんなに使い勝手のいい端末はなかなか無さそうな感じ。Googleのサービスとの連携は流石の使い勝手の良さだし、iOSで使っているたいていのアプリはAndroidにもある。

問題はMacとの連携。iPhoneならiTunes経由で基本的に何でも簡単にできる。カレンダーや連絡先やメモみたいなデータも、Apple IDを使うiCloud経由で簡単に同期できる。しかしアンドロイドだとそうはいかない。基本はGoogleアカウントだし、たとえば音楽や着信音を入れるだけでも、いちいちググって方法を勉強しなければならなかった。何より最初に戸惑ったのは、アンドロイドには標準のメモアプリがないらしいことだった。Keepがそれにあたるのかもしれなかったけれど、なんか違う感じがしたので、MaciPhoneでも使っているSimplenoteをストアからインストールして同期させた。このアプリは、とにかくテキストを打ち込むだけなら名前の通りシンプルで軽くてオススメ(この下書きにも使っている)。というか今、アンドロイドについては現在進行形で暇さえあるとイチから勉強している最中。因みにMacとのファイルの遣り取りのためにはAndroid File Transfer というソフトを入れた。

正直なところ、今更スマホの使い方をイチから憶えるのはかなり面倒くさい。MaciPhoneに慣れきっていると、ファイル管理が直感的とは言い難く(というかiPhoneはいちいちそういうことを考えなくて済む)、わかりにくい点は否定できない。だけれども、体験としては新鮮で、ある意味では楽しい。まあ感覚的には、未知の新しいオモチャを手に入れた、という感じ。

そして、まだイマイチよくわかっていないなりにいろいろ使っていて思うのは、泥もべつに悪くないな、ということ。母艦を含む環境全てが自分はMacなのでその点だけはiPhoneが超絶便利なのだけれど、携帯単体、或いは窓機と連携して使うなら、別にiPhoneにこだわる必要なんか全然ないんじゃないか、と思った。それくらい端末としてのPixelはよく出来ている、と感じている。 というか、なんかiPhoneに似ている。

また、中身以外でも、単純に手に持った時の質感がかなり良い。ディスプレイにガラスフィルムを貼っただけでまだ裸で使っているのだけれど、この手触りはクセになる。ぶっちゃけ四六時中触っていたくなるからヤバい。ただツルツルしすぎていて外で落としたら拙いので、近々ケースは着ける予定。とはいえ、ここでPixel の弱点があらわになる。それはiPhoneに比べてとにかくアクセサリーの選択肢がないこと。店頭だとケースなんか殆ど選べない。同じ泥機でもXperiaなんかだとけっこうあるけれど、Pixel の品揃えは哀しくなるレベル。なので買うのはアマゾンになる。

いずれにしても、この端末がタダというのは、お得以外の何物でもない。まあ、厳密にいうと1円払ったけど。

それでも一点だけ、気に入らない点はあった。それはイヤホンが同梱されていないこと。イヤホンジャックもないし、端子がライトニングではないから、現状では使えるイヤホンが手元にない。まあ基本的にスマホで音楽は聴かないけど、無いのは不便。だから、変換アダプターか、Type-Cかワイヤレスのイヤホンを別に買わなければならない。ただ、ワイヤレスはいちいち充電することが面倒くさいから嫌だし、有線のイヤホンがうちにたくさんあるので、多分変換アダプターを買うと思う。