二度とやらんが

中に着る物を工夫することで真冬と暑い時期以外は便利に使えるヘリーハンセンのスカンザライトジャケットという上着を気に入っているのだけれど、このジャケットには致命的な問題がある。二万程度のレインウェアなのだけれど、けっこう各アウドドアブランドが似たような価格帯で似たようなものを出している。たとえばノースフェイスならドットショットジャケット、パタゴニアならトレントシェルジャケットという感じ。ま、この辺ならどれも価格的にも性能的にも大差ないのだけれど、全部同じ問題を抱えている。

それは、裏地のポリウレタン素材の防水コーティングが、経年劣化で加水分解を起こして剥がれてくること。

ただ、これはどうやっても避けがたいらしい。それでも、裏地がボロボロになっても、表地はなんともないから、かなり悩ましい。しかしかなりみっともなくなるので、少し前にどうにもならなくなった一着目は潔く捨て、このところ二着目もかなりやばくなってきて、そろそろ潮時かと思い、最近、三着目を買った。それでも未練がましく「捨てるのはもったいないなー」と思っていたところ、三着目を買った時にアウトドアショップの店員さんとその話をしたら、「自分はやったことないけれど、裏地のコーティングは重曹で剥がせるらしいですよ。ネットで検索すると、ウェアだけじゃなくザックとかテントとか同じ問題を抱えるモノのダメになった裏地を剥がしている人がけっこういます」と聞いた。もちろん防水の性能は皆無になるので、単なるナイロン地のウインドブレーカーみたいなものになってしまうのだけれど、それならそれで使い道はあるし、どうせこのままなら捨てるだけなので、ダメ元で早速実行してみることにした。

で、結論を先にいうと、結果としては成功した。綺麗さっぱり裏地は剥がれ、ウインドブレーカーとして再生した。

ただし 「またやるか」と問われたら、「二度とやらん」と答える。もしやるとしても、コーティングが最低でも八割がた死んだ状態にならなければやらない。今回は6割くらいが死んでいる状態だったと思うけれど、もうめちゃくちゃ疲れた。

方法は、ネット上にある通りに従った。タライにお湯を入れ、そこに重曹を投入し(量は適当)、一昼夜浸けて放置。ただそのままだと浮いてきてしまうので、バスタオルで綴じ蓋をした。

そして、丸一日後、風呂場で、百均で売っているタワシみたいなスポンジでひたすらゴシゴシ。これがもう地獄のように大変だった。完全に劣化している部分は軽く擦るだけでボロボロと剥がれてくるが、まだ大丈夫な部分が難敵で、シャワーで熱い湯をかけながらそうとう根気よく擦らないと剥がれなかった。

それで結局その日は簡単に剥がれた首回りとか両袖とかを処理したところで疲れきり、ギブアップ。再びタライにお湯を入れて重曹を投入し、また一昼夜放置。

そして翌日、またゴシゴシ。熱いシャワーや重曹を溶かしたお湯をかけてひたすらゴシゴシ。で、なんとかあらかた落とすことができると、念の為にもう一日、重曹に浸け、最終日、全体的に念入りに削ぎ落とし(ポケットの中とかが超面倒くさかった)、洗濯機へ。

洗濯後、乾くと、ところどころ少しずつまだコーティングが残っていたので、それをガムテープでペタペタと地道に除去。

そうして、述べ3日でなんとか終了。とにかく、疲れた。それでも苦労の甲斐はあって、見事に再生し、ジャケットは第二の人生を歩み始めた。ま、今はまだ寒すぎるので着られないけれど。

しかし「形あるものはいつか壊れる」と言うけれど、適切なメンテナンスで維持できるものなら、壊れかけたからといってさっさと諦めはせず、知恵と工夫で修正し維持してみてもいいんじゃないか、と思った。