シャー音

この世に存在するさまざまな音の中で、カーテンを弾くときのシャーという音が、嫌いな音のかなり上位にある。昔からあの音が大嫌いで、聞くとどうにもイラっとして仕方ない。布団叩きの音も苛つくけれど、流石に最近は布団を叩く馬鹿って滅多にいない。でも、カーテンのシャー音は、窓を開けているときにどこからか聞こえることがたまにあってイラっとくるし、実家で母ちゃんが朝晩勢いよくシャーとカーテンを開けるとくっそムカつく。どいつもこいつもなんでそんな親の仇みたいに勢いよくカーテンを開け閉めするのか理解できない。なので、自分の住処の窓やガラス戸は全部(といってもそんなにいくつもないけど)ブラインドでカーテンはない。

しかし最近、寝ている部屋のベランダに出るガラス戸に付けてあるブラインドがボロくなってきた。だいたい片側しか上げないので、そちらだけがなんか調節する紐がバカになり、ガラス戸を開けるだけの時なんかはいちいちいブラインドは上げず、羽根の間から手を突っ込んで開けたりするので、一部の羽根だけが割れたり、羽根を吊っている紐が弛んだり解れたりしてきて、だいぶみっともなくなってきた。しかし、替えるとなると両方替えなければならないし、ブラインドって案外高く、だいたい一枚一万くらいするので、どうしようかと迷っていた。

とはいえ、日に日にボロくなる一方で、さすがにだんだん見た目が耐え難くなってきて、仕方ないので新調することにした。で、どうせ買うならほんとうはIKEAへ見に行きたかったのだけれど、ちょっと遠いので、とりあえず近くにあるニトリへ行った。

そうしたら、ブラインドが意外に安く売っていて、一枚二千円くらい、二枚でも四千円くらいだった。ただ、色目がイマイチだったので、どうしようかな、と迷いながら、何気なくカーテンを売り場を見ていったら、なんと遮光とレースの四枚組(各二枚ずつ)で五千円くらいのセットがあって、かなり惹かれた。安くても見た目が悪ければカーテンって常に目に入るモノだからやめるところだけれど、それはデザインがシンプルで色も悪くなかった。しかしカーテンとなると、どうしてもあのシャー音が気になるし、そもそも部屋の窓にはカーテンレールがないので、それも買わなければならない。で、どうしようかな、とまだ迷いながら(レールっていくらくらいするんかいな)と思いながらカーテンレールの売り場を見たら『静音』とわざわざ謳われているモノがあって、二千円ほどだった。ただ、静音ではない普通のレールは千円ちょっとだったので、若干割高だったけれども、買うならここは譲れない点だな、と思った。ただ、それでもまだ、どうせカーテンを買うならイケアでよく見る棒に輪っかを通すタイプのモノがいいかな、という思いもあり(というかイケアのカーテンって安いものは本当に安いし)、しばらく迷ったのだけれど、結局、やっぱりイケアまで行くのは面倒臭かったので、そのまま四枚組のカーテンと『静音』のカーテンレールを買った。もともとブラインドは一枚一万くらいを覚悟していたし、ニトリのブラインドなら二枚で四千円ほどでカーテンより安かったけれど、色がどうしても気に入らなかったので、まあ七千円ほどで一式揃うならいいか、と決めた。

で、帰ってきてブラインドを外し、カーテンレールを取り付けてカーテンをぶら下げ、弾いてみたら、本当に静かで驚いた。もちろん全くの無音ではないのだけれど、神経を逆撫でするあのシャー音は見事に消えていて、これならぜんぜん問題なかった。

ただ、カーテンなんか買ったことがないので、開けた時にまとめておくふさかけのフックは別売りであることに帰ってきてから気づき、後日、100均で買ってきて付けた。