言い回し

基本的に人の言葉遣いが気になることは滅多にないけれども、唯一、めちゃくちゃイラっとするというかカチンとくる言い回しのパターンがある。それは、こちらの質問に疑問系で返された時。

具体的な例を挙げてみると、たとえば誰かに、

「金曜の夜、空いとる?」

と訊いた時に、間髪入れずに、

「なんで?」

と疑問系で返されるパターン。これがどうにもイラッとくる。

というのも、この場合、解答は「空いている」か「空いていない」かの二択しかないわけで、しかも、こちらがそう訊いている時点で、理由があるから訊いているに決まっていて、何故もクソもない。理由がないならそもそも訊かない。だからつまり、この「なんで?」という疑問系の返事には何の意味もなく、それどころか、その答えによって更に余計な言葉の遣り取りが必要になり、そのプロセスが無駄。だからイラつく。「空いている」という答えなら「じゃあさあ」と話が前進し、「空いていない」という答えなら、それ以上に話が進むこともないので「なら、いいわ」で終わる。それだけのこと。

もちろんこれが「空いているけど、なんで?」とか「空いていないけど、なんで?」とかなら話は別。なぜなら、どちらの場合も「いや、実はさ」みたいに話を進められるから。逆に言うと、「空いていない」のなら、そう答えずにただ「なんで?」と訊き返されても、どのみち空いていないならこちらの質問の意図を説明するだけ時間の無駄。しかし「空いていないけれど、なんで?」なら、まだこちらの提案によっては「空いていない」けれど理由によっては「空けるわ」になる可能性があり、「なんで?」という質問にも答える価値が出てくる。だけれども最初から「なんで?」で予防線を張られると、途端に面倒臭くなり、もうええわ、とイラッとくる。

こういう性格なので当然、自分も誰かから何か訊かれたときに「なんで?」と疑問系では返さない。ただ、それだと、なまじか正直に答えたことで、場合によっては自分が望まない事態に引き込まれていく可能性もある。しかし、解答なんていくらでも軌道修正できるから、たいして問題にはならない。

たとえば上で挙げた例でいうと、「金曜の夜、暇?」みたいに訊かれて「ああ、暇だよ」と正直に答えたとする。すると「ちょっと〇〇へ行かね?」と誘われて、別に行ってもよければそのまま承諾すればいいのだけれど、その〇〇によっては行きたくないことも充分あり得る。その「行きたくない」場合は、正直に「嫌や、やめとく」と断ってもいいし、断りにくい場合は「でもまだ金曜の予定は流動的だから、もしかしたら無理かもしれん、分からんわ」みたいに付け加えておく。とはいえ実際にはまずこのパターンはなく、たいてい断るなら最初からはっきり断るけれど、相手やタイミングやその場の雰囲気によってはそれが難しいことがある。しかし、いったん暇かどうかを明らかにした上でこう答えておけば、実際その後に結局「ごめん、やっぱちょっと無理みたい」と断ったとしても、とくに波風は立たず、問題は起きない。無論、いったん承諾しておいてのドタキャンは論外。相手がある場合のドタキャンは、一発でいろいろなものを破壊し失ってしまう恐れがある。だから断る場合は、ちゃんと断らなければいけない。しかも、なるべく、できる限り早めに。言うまでもなく曖昧は最も悪。

ま、要するに、他者との会話はできる限り簡単に、シンプルに、さっさと済ませたいだけ。余計な腹の探り合いとか駆け引きとか、ひたすら面倒臭くて鬱陶しい。